スギダラ紀行魚梁瀬杉編 高知県馬路村
文 長町美和子
 
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■嵐を呼ぶスギダラ

 
 



対策を練った伊丹空港 喫茶店蓬莱 551前で

   その日、太平洋沖に強烈な低気圧が近づいているとのことで、天気予報では高知は残念ながら雨。東京もどんよりと曇っていた。
「去年、仕事で高知に行った時なんて台風で飛行機が着陸できなくて、伊丹空港に降りたんですよ」
 と何気なく話した時には、それが再び繰り返されようとは思ってもみなかった。だって東京は雨も降っていなかったんだもの。しかし離陸予定時刻が来てもなかなかゲートは開かない。待っている間に、その台風の時にいかに苦労して伊丹から高知までJRを乗り継いでたどり着いたかという話を続けていた。
 ふと見上げると、電光掲示板には「天候不良のため……」という怪しげな文章が流れ、辺りには不穏な空気が満ちている。
「長町さんがあんな話するからだよー」
 むくれながらも、まだ冗談のノリで笑う余裕があった杉王・南雲さん。しかしその1時間半後、高知上空を旋回し始めた飛行機の中でバラバラに座っていた私たちは、機長の暗いアナウンスを聞きながら「マジかよ……」とうなだれていたのだった。
 しょっぱなから暗雲立ちこめる馬路村・魚梁瀬杉見学ツアー。大阪・伊丹空港着陸後、いったん東京に引き返して、後日仕切り直しをするかという案もあったが、一人前向きに嵐の高知に乗り込む決意を固めていた杉王によって押し切られ、JASのプロペラ機で高知・竜馬空港に飛ぶ作戦に出ることに。こっちも「もしかしたら引き返すかもしれません」と言われたけれど、こうなったら意地である。
「何度引き返そうとも絶対高知に行ってやる!」
 ラウンジの喫茶店でヤケクソの乾杯をしたところからツアーはズブズブと本格的に進行して行った。